古内東子とRay Bardani

わたしはもう何年もうざいくらい古内東子が大好きと言い続けているのですが、来月に出る新作『透明』はひさびさの全曲セルフアレンジということで、資質的にはかつてよく言われたユーミンよりRCA時代の山下達郎に近い、という従来からの印象を強めてくれるはずと今から期待ではちきれそう。

透明 (DVD付)

透明 (DVD付)

今回のミックスはルーサー・ヴァンドロス/マーカス・ミラー/デヴィッド・サンボーンなどとやってきたレイ・バーダニとのこと。とはいえレイさんと組むのはこれが初めてではなく'95年の『Strength』'98年の『魔法の手』も手がけているので、新作をたのしみに待ちながらこの2作を聴きかえしてみました。
Strength

Strength

ジャズ・フュージョン界からマイケル・コリーナをプロデューサーに迎えたNY録音の渋い4枚め。おかげで演奏陣の顔ぶれが異様に豪華なのですが、山下達郎のソロデビュー作『Circus Town』とかぶっているひともいて、わたしが資質的に近いと感じるゆえんだったりします。しかし「緊張で声が出なかった」と回顧する山達とは対照的にこの面々をしたがえて堂々と自分の音楽をやりきった彼女が当時まだ23歳だったことに驚く。真夜中の街を大人たちの遊園地と表現した「朝」(夜明けを告げるようなマイケル・ブレッカーのテナー・サックスがかっこいい)から、サンボーンのブロウがゆらぎの中の強さを演出する「雨の水曜日」まで未だ色褪せない名盤です。

古内東子 - 朝

魔法の手

魔法の手

『Strength』が『Circus Town』でいうNYサイドだとしたらLAサイドにあたるのはこのアルバムかも(実際はLAと東京での録音なのですが)。ブレイク真っ只中の時期の作品でチャート1位にもなった7枚め。同じレイさんの仕事でも音は『Strengrh』のくっきりとした輪郭とちがってラフで乾いた質感に仕上がっています。ここでもまた演奏陣が豪華なのですが絶対に触れなくてはいけないのがソウル界の名ギタリスト、デヴィッド・T・ウォーカー。彼が弾いている3曲はいずれもメロディーにつつましく寄り添いながらやわらかな主張もあって、歌伴の名手と呼ばれるのも納得の名演です。「ぎりぎりまで」は全キャリア中わたしのいちばん好きな曲。

古内東子 - 雨降る東京