「おともだち」高野文子

おともだち

おともだち

高野文子の作品集をお借りしたので読んでみました。初出は1983年とのこと。パステルカラーの装丁におとらず愛らしい内容の少女漫画です。2ページでおわってしまうほど短いものもふくめてぜんぶで5つの物語がおさめられていますが、やはりとくに名作なのが「春ノ波止場デウマレタ鳥ハ」と「ボビー&ハーシー」のふたつ。大正時代の港町の女学校を舞台にした「春ノ波止場デ〜」はチルチルのように気高く凛々しい少女・笛子のかなしい秘密を知った主人公・露子が「青い鳥」の練習を通して劣等感や怯えを乗りこえていくかりそめの友情物語。長く閉ざされていた街のホテルに一夜だけの灯りがともるラストははかなくうつくしい。自転車メーカーの社長の昔話というかたちで語られる「ボビー&ハーシー」はまるでピチカート・ファイヴの名曲「ベイビィ・ポータブル・ロック」みたいにキュートな展開でほほえんでしまいました。そのほか少女ノワールといった味わいの「デイビスの計画」は最後に「夜霧よ今夜も有難う」が流れるなど遊びごころのある好編。

Pizzicato Five - ベイビィ・ポータブル・ロック